海外進出企業のグローバル人材の採用状況
グローバル人材を必要とする海外進出企業の現状を確認します。総務省が2017年に実施した「グローバル人材の確保状況等に関する企業の意識調査」は、約1000社のサンプルを基にした参考価値の高いデータです。
海外事業の課題
海外事業において直面する課題(複数回答ベース、多い順):
- 外国語の能力不足による営業上のトラブル – 27.1%
- 海外赴任の拒否 – 25.1%
- 優秀な外国人社員の退社(人材流出) – 23.6%
- 海外赴任中の社員が現地に適応できず帰国 – 22.3%
- 優秀な日本人社員の退社(人材流出) – 19.6%
- 日本人社員と外国人社員との間のトラブル – 14.5%
語学に起因するトラブル
言語の違いによるコミュニケーション問題はリスク増加要因です。国内でさえ誤解が生じるのに対し、非母語での交渉はトラブルの可能性がさらに高まります。
補足:海外では契約書締結は忘れずに
日本企業、特に中小企業では契約書締結を信頼の欠如と捉える傾向があります。しかし海外取引では、後発的トラブル回避のため契約書は必須です。
本人による駐在の拒否
駐在拒否は意外に多く見られます。主な理由は親の介護や幼い子どもの養育といった家庭事情です。少子高齢化が進む日本では、優秀な人材確保後も本人意向とは別の理由で派遣が困難な場合があります。
優秀な外国人材の流出
グローバル人材の転職(ジョブホッピング)は世界的傾向です。特に日本の年功序列・終身雇用制度では、能力より入社年次が評価基準となるため、実力主義の外資系企業への転職が発生しやすい状況があります。
現地に合わせた評価基準や給与設定を実施する企業も存在しますが、本社制度との整合性からジレンマを抱える現地法人が多い実態です。
駐在員が現地に適応できず
新規事項への適応性や異文化生活経験が、現地適応の重要要素です。変化のない安定生活を求める者や海外経験のない人は、新しい環境でのストレスに苦しむことが少なくありません。
コミュニケーション能力の欠如や、本人が海外生活を希望していない場合、ストレスはさらに増加します。
海外駐在では、日本人同士が小さなコミュニティを形成しがちです。マイノリティ状況での結束は強まりますが、世代間での温度差や距離感の相違がストレス要因となる場合があります。適切な人選と環境構築が重要です。
優秀な日本人社員の流出
外国人材流出に続き、優秀な日本人社員の離職も課題です。本人または家族が現地定着、本社退職して現地就職、他社転職によるスキルアップ、ワーキングホリデー利用の退職、昇進機会の不足、国内外業務スタイルの相違といったケースが報告されています。
本人のスキルアップによる退職
「人生100年時代」の浸透に伴い、単一企業への定年勤務は相対的リスクと考えられるようになりました。転職市場の活性化は顕著であり、海外経験後の新たなキャリア追求は自然な流れです。
この動きは優秀な外国人材のジョブホッピングと同じ傾向を示しており、むしろ「日本の人材流動性が国際基準に近づいた」と解釈できます。
国内勤務と駐在時の業務内容のギャップ
駐在期間は少数スタッフでの経営運営により、業務範囲と裁量が拡大します。特に若手駐在者はその差が顕著で、帰国後の物足りなさから転職するケースが一般的です。
帰国後にチャレンジング業務への配置を見据えることで、社員流出防止が可能です。
日本人・外国人社員同士のトラブル
日本の古き商慣習を所与とした運営
年功序列組織で長期勤務した管理職が、従来の日本的マネジメント(「阿吽の呼吸」、暗黙的学習、強制飲み会など)を外国人スタッフに適用すると、離職につながります。
本社をみて仕事している
駐在員は通常3~5年での交替が前提ですが、現地外国人社員は継続勤務します。現地歴が長い外国人社員ほど経験と知見が蓄積されているため、期限付き駐在員との関係性に課題が生じやすい状況があります。
現地外国人スタッフの提案が、本社優先により採用されないケースが多発します。駐在員が本気で本社に説明したか否かは現地スタッフにも把握され、「駐在員は本国の本社を向いている」という認識が形成されます。
グローバル人材の採用状況
約7割の企業が海外事業に必要な人材が不足している
「不足している」と「どちらかといえば不足している」の回答で構成される7割の不足状況により、グローバル人材市場は供給不足状態です。2022年現在でも大手グローバル企業と大手コンサルティングファームの人材採用は激化しており、コロナ禍収束後も慢性的課題として存続します。
海外事業ノウハウを有する日本人の中途採用ニーズが最多
必要な人材採用状況(複数回答):
- 「国内のノウハウのある日本人(中途採用)」 – 約6.5割
- 「国内の日本人新卒者」 – 約6割
- 「国内の外国人」 – 約4割
- 「海外の外国人」 – 約3割
即戦力による早期競争力強化の意向が相対的に強いことが読み取れます。ただし6割が新卒採用を回答しており、即戦力ありきではなく中長期視点での育成方針を有する企業も同程度存在します。複数回答制のため、新卒一括採用と並行して即戦力強化を図る企業が実態に近いと考えられます。
外国人材の採用企業も3社に1社と決して少なくない
外国人採用は日本人比で相対的に少ないものの、国内外国人を4割、海外外国人を3割の企業が採用しており、3社に1社は外国人雇用となります。対象企業が海外進出企業のため、現地外国人スタッフも含まれます。現地法人非保有の海外展開企業のみではないため、妥当な数字と考えられます。
終わりに
グローバル人材需要の大きい海外進出企業のデータを基に、課題と採用状況を検証しました。最後に、ダイバーシティ・インクルーシブ志向が外国人材採用をさらに促進する可能性について述及します。
イノベーション重要性の増加に伴い、企業は同質性組織からの脱却が必須です。組織とヒトのアップデートにはダイバーシティ・インクルーシブ視点が重要であり、今後は日本人に加え外国人との協働機会が増加するものと考えられます。
「語学力があり、異文化理解があり、チャレンジ精神旺盛な」グローバル人材採用が、今後さらに活性化する状況へ移行すると予想されます。